視線がピタリと重なる、それが合図。
どちらからともなく噛みついたそれは、所有の証?
押し殺した声を吸い出して欲望埋め込んで。
ぐるぐると廻る世界に微笑みを。

"廻れ廻れ"

きつく締め付けられた部分が、じくじくと熱と痛みを生む。
「…っ」
何度目になろうと、慣れないものは慣れないようだ。
酸素を求めてはくはくと喘ぐ口許にそっと口付けて、古橋はまた少しだけ奥へ進んだ。
「―っあ」
ホロリ、と涙が零れて頬を伝って消える。
これが痛みだけの一滴ではないことを願いながら、古橋は汗で濡れた前髪をそっと撫でた。
「……花宮」
―非生産的な行為が何を生むか知っているか?
暗がりの中でボンヤリと浮かぶ朧月を背景に、花宮は顔を歪めて笑っていた。
「代えようのない愛しさと、虚しさだ」
こちらの答えを待つでもなく、花宮は吐き捨てるように呟く。
それはこれからの行為に対する非難だったのか、そうと分かっていて進もうとする自らへの警告か。
「何もかも、壊れれば良いんだよ」
声は軽やかに、けれど今にも涙を流してしまいそうな瞳で花宮は俺の腕を掴んだ。
「っん、はっ…あ…っ」
緩やかに律動すれば、花宮の掠れた声がそれに合わせて漏れる。
その切なげな表情が少しでも快楽に染まれば良いと、花宮の擡げ始めた熱に触れる。
「―っあ!!」
花宮の身体が僅かに仰け反り、情欲に濡れた肢体が曝け出される。
身体中の熱が一点に集中していくのを感じ、俺は律動を速めた。
「ふっ…ん、ふる…はっ、し…!!」
「花宮…っ」
不毛で、非生産的な報われる事のない行為。
それでも、俺達は何も知らない子供のように続けていくんだろう。
埋める事の出来ない、愛情を満たす為に。
fin.