貴方が笑う、それはそれは嬉しそうに。
貴方が触れる、それはそれは愛しげに。
けれど、その瞳も掌も私には決して届かないの―。

「やぁ、久しぶり」
半年ぶりの再会は、いつかのそれと同じで。
その瞳は影を落として俺を見る。
普段ならこんな顔を見せはしないだろう―これは俺だけの瞳。
「会えて、嬉しいよ?」
「…花宮」
何か言いたげな唇を無理矢理奪って、俺はとびきりの笑みを浮かべてみせる。
「いつ会えるのか、ずっと心待ちにしてたんだ…木吉もそうで「いい加減にしろ!」
嫌悪感を剥き出しにして、俺を振り払う姿に普段の面影は微塵もない。
そう、それで良い。
「花宮…お前は、俺をどうしたいんだ…!!」
「…別に、どうもしないよ?木吉にはそのままでいて欲しいんだ」
「だったらこんな事…イカレてる」
苦悩に歪む顔はあの日と全く変わらないもので、俺は嬉しさが込み上げる。
「イカれてる?…ふはっ、今更何言ってんの、木吉は」
甘い、甘過ぎるよ、木吉。
離れていた距離をまた縮め、耳元囁いてみる。
俺がイカれてる?そんなの今に始まった事じゃないって知ってるくせに。
「…そういえば、そっちの主将さんは元気だね」
「…日向が、どうした」
ここでこの名前が出るとは思わなかったのか、目を見開く表情が無様で綺麗だ。
「去年あんな目にあったのに、よく帰って来れたよなぁ…」
「…まさか、」
「また、あの子を泣かしちゃうね、木吉」
その愕然とした表情、凄く好きだよ―そう呟くが早いか、俺は二度目の口付けを交わした。

幸せに満ち溢れた彼があの子のものだと言うのなら、私は絶望に満ち溢れた彼を愛しましょう―。

「俺はお前の幸せを壊すのが楽しいんだよ」

"そして私は優雅に笑う。"

Fin.