再誕

1年が終わろうとしている。
シュテルンビルトは一層輝きを増して年の終わりを祝福しているようだ。
1年前はこの光の意味も人々の僅かな賑わいの違いも知らなかった―いや、理解する事が出来なかった。
俺は、知る事が出来たのだろうか。
1年前と変わらぬ疑問は未だに答えられない。
それでも今を『生きる』のは楽しかった。
俺は、初めての『誕生日』迎える


『まさか、信じられないよ!!』
『引退も衝撃的だったけど、こっちの方がもっと驚いたわ!!』
『おかえり!待ってたぜ!!』
次々と画面に映し出される人々は口々に驚きと喜びの声を上げている。
誰もが1年前のあの日、嘆き悲しんだ。
マーベリックによる一連の事件と、タイガー&バーナビーの引退。
突然の発表に人々が動揺する中、タイガー&バーナビーはその優れた戦績と共に去っていった。
ピ、とTVの電源を落として俺はソファに腰掛けた。
コンビ復活から3日。TVでは連日のように彼らのサプライズを大きく取り上げている。
よくもまあ、飽きないな―というのが俺の正直な感想ではあるが、2人がコンビを復活させたというのは喜ばしい。
リリリ。と通信を知らせるアラームに、俺はPDAのスイッチを押した。
『黒虎!急用だ!!今すぐここへ来てくれ!!』
「了解した」
斎藤の要請に、俺はすぐさま立ち上がってコートとキーを取る。ラボまでの所要時間はチェイサーで10分もかからない。
夕食までには間に合うだろうと思いつつも、念の為に書置きを残して俺は家を出た。

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