「黄瀬君っ、お誕生日おめでとう!!」
「黄瀬、誕生日なのかーおめでとー」
ファンの子からの沢山のプレゼント、手紙、モデル仲間からのメール、プレゼント……エトセトラ。
毎年のように、送られてくる、沢山の気持ち。
嬉しいけれど、どこか他人事の様に思えてしまう、モノ。
沢山の祝福に、笑顔を絶やす事はせず、俺はただ、受け取るだけの機械みたいだ。

「黄瀬ー!!!」
体育館に入るやいなや、キャプテンの怒号が飛んでくる。今日は別に何もしたつもりはなかったんだけれど。どうしたんだろう。
「お前、コレどーにかしろ!他の部員が部屋使えねー!!」
ドサッと置かれた山の様なプレゼント。あー、それか。
「スイマセン!急いで片付けるから怒んないで欲しいッス……!」
ガサガサと荷物を振り分けて、あらかじめ持ってきた大きな紙袋に無造作に入れる。こんなに沢山貰っているのに、あんまり嬉しくないのは何でだろう。
 誕生日は好きだ。俺の生まれた、特別な日だから。
父さんも母さんも、お婆ちゃんもお爺ちゃんも、みーんな祝ってくれる。だから、小さい時から誕生日は大好きだった。
それなのに、モデルになって、キセキの世代と呼ばれるようになってから、ドンドンネズミ算式に増えていく祝福の言葉とプレゼントに、意味なんて無い様な気がしてしまうようになった。
ヒトは沢山の物を与えられると感覚が麻痺するんだと、どこかの本で読んだ気がする。もしかしたら、俺はこの沢山の祝福に慣れきってしまったのかもしれない。
「つまんないの」
最後の一つを入れ終えて、俺はポツリと一言零す。
バスケだってそうだった。強いヤツがドンドン消えていって、感覚が麻痺していった。それと同じ事なのかと思ったら、何だか悲しくなって、涙を少しだけ流した。
誰も、俺を『黄瀬涼太』というネームバリューでしか見ていないという事。
それは俺の地位を上げるけど、俺の価値は比例して無くなっていく。
来年も、再来年も、もしかしたらそのずっと先も、俺は『黄瀬涼太』に縛られて生きていくんだ。


Next