『主従の法則』から一部抜粋

今日から、俺は軍人として、この国家に仕える身となる。

この国は、最近まで国と呼ぶには程遠い、荒れた土地であった。人種、宗教、価値観―どれをとって見ても、奴らとこちらが統合するなんて有り得ないと思っていた。

それが、ある一人の人間によって瞬く間に制圧され、国家が造られた。ここにいる人間じゃ到底出来ない様な、そんなやり方で外側から俺達の国は出来上がった。

「この時をもって、この地は我が軍の制圧下となった。そして、我々はこの地に新たな国を創造する!」

今の国家元首が俺達と、他国の奴らに告げた宣言の一部だ。俺は今でもあの日のこの言葉が忘れられない。

真直ぐとした瞳には何の感情も見えていない様で、その実、何かを企てようと俺達を見定めているかの様な目。

俺達は盤上の駒でしかない様な気分にさせられたのは、間違いなくあの瞳の奥に燃え盛る炎が見えたから。

 あの宣言からまもなく、ここに居住している者の調査と、国民の証である、と言われて渡された身分証明カード。

段々とこの地が国へと変わりつつあった頃、軍人募集のビラが盛大に撒かれた。この国は、いわゆる軍事国家というもので、きっと大量の兵士が必要なのだろう。経歴、職業問わず健康な者なら誰でも志願が可能である所が、まさにそれを現わしている。

その時の俺は、何の職にも就かず、日々を眺めて過ごす様な怠惰な日々を送っていたから、何の躊躇い(ためら)もなく軍部への志望届けを出した。もしかしたら、この国になろうとしている地を治める人間をもっと近くで見たかったのかもしれない。