『自転車』より一部抜粋

「なー!今日はどこ行くんだよー!」

「着いたら、分かります……!」

緩やかな坂が続き、登り坂が見えてくる。黒子の横に並ぶと、ハア、と息を吐きながら粒の様な汗を浮かべている。

大丈夫かよ、と気遣う火神に多分、と黒子は苦笑いを浮かべて返す。

ペットボトルを持ってきて良かった、と思う。この坂は、なかなかにガッツがある。火神も立ち漕ぎをして、グ、とペダルを踏む。

「もう、すぐ、ですよ……火神君!」

いつの間にか後ろに行ってしまった黒子の声が聞こえる。火神はペダルを尚更強く踏み込んでスピードを上げた。

「おーっ」

坂を登り切ると、一気に視界が広がり、小さな広場が目の前に現れる。

サアッと風が火神の髪を撫で、汗を身体十に感じさせる。黒子は、自転車を引きながら、ゆっくりとこちらへ向かってくる。

他、三作あり