黄瀬編『背中』より一部抜粋

ヘトヘトッスよ、と両手を上げてみれば頭にかけられたタオルごと、クシャリと頭を撫でられた。

「何、考えてた?ボーッとしてたろ、お前」

ハッとして横を向けば、視線が交わる。真直ぐな瞳は、何もかもを見透かしていそうで、俺は少しだけ俯く。気付かれるのが、怖かった。

「……ちょっと、悩んでて」

「…………」


「でも、大したことじゃあ、ないんで」

沈黙が辛くて、無理矢理に笑顔を張り付けて笑う。

「…………バレバレだっつの」

ぎゅ、と肩を掴まれ、引き寄せられる。汗の匂いにオレはまたドキリとする。

「お前がウジウジしてよーが、関係ねぇんだよ。俺とお前は、そんな浅い関係じゃあねえだろ」

「!」

うわ、と思わず声が上擦る。気付かれてたなんて。

「オラ、次のメニューこなすぞ

他、二作あり