森山編『二人で逃げようなんて言えなかった』より一部抜粋

「馬鹿だよなあ、俺も」

主人のいなくなった椅子に座り込み、机に突っ伏して一人呟く。

笠松が望んでいる人はアイツで、俺はただのチームメイト。良くて、相談できる親友止まり。

報われない恋なんて、あの日の負けた試合の様にすっかり忘れられたら良かったのに。

三年もかけて地道に作り上げた恋心を壊すには、もう遅かった。

「早くこの一年なんて終わっちゃえば良いのに」

そうしたら俺達は大学生で、アイツは高校生のままだ。

「でも、無理なんだろうなあ」

笠松はきっと、離れてもアイツを選ぶ。

アイツも少し離れたくらいじゃ、何とも思わない。むしろ、愛情を深めるかもしれない。

他二作あり