笠松編『キレイな人』より一部抜粋

「ねえねえ、センパイ」

「何だ、黄瀬?」

「ここん所、俺、もう少し出来そうなんで増やしてもらっても良いッスか?」

トントン、とメニューの一つを指差して、ニッコリと笑う。なぜかその表情を直視出来ずに、俺はメニューに視線をやったまま答える。

「ああ、じゃあ監督には俺から言っておくから。他のメニューもちゃんとやれよ?」

「はーい!もちろんッスよ!」

大きく手を上げて返事をする様子は、まるで幼稚園児の様だ。笑いを少し堪えながら、さっさと行け、と指示をする。

クルリと踵を返してメンバーの輪の中に入っていく黄瀬をボンヤリと眺める。

やっぱり、際立っていると思う。

沢山いるチームメイトの中で彼だけが、キラキラと輝いて見える。

誠凛と試合をした後の彼は更に煌めいていて、俺の目は彼の一挙一動を追ってしまう。

他、二作あり