「黄ー瀬、笠松が呼んでるぞ」
コツン、と森山さんが後ろから俺を叩く。部活の時間なんだから、急がなきゃいけなかったのに、こんな所でボンヤリしていたから怒られてしまう。
「はーい、今すぐ行くッスよ。コレ、入れ終わったんで」
ニコリと笑った俺の顔に、森山さんは肩を竦めてやれやれといった表情を浮かべる。
「お前なー。沢山可愛い女の子からプレゼント貰ったんだから、そんな辛気臭い顔しないの」
ほら、笠松待ってるぞ、と言って森山さんは先に出て行く。森山さんは案外人の感情を読める人だから、時々困る。
パンッと頬を叩いて気を引き締めて、部室から出る。もう、この事を考えるのは止めにしよう。
ガチャリ、と扉を開けると同時に、色とりどりの紙吹雪が飛んだ。
「え?え?」
「誕生日、おめでとう、黄瀬ー」
先輩達や、チームメイトの皆が、笑って俺を見る。もしかして、サプライズ?
「部室にあんな風にプレゼントを放置する訳ねぇだろーが」
笠松センパイが俺に近寄って、ポン、と頭を叩く。
「おめでとう、黄瀬」
「……センパイ……!」
フワアッと温かな気持ちが心に満ちる。久しぶりに感じた気持ちだった。
「おいおいおい、泣くなよー。お前の誕生日なんだから笑えって」
森山さんが笑う。
「嬉し泣きなんじゃないか?良かったな、黄瀬」
小堀さんが森山さんにつられて笑みを零す。
「……今日終わったら、お前の誕生日パーティな。空いてるか?」
「もちろんッス!!」
笠松センパイの言葉に即答する。もしかしたらモデル仲間やら家族から誘われるかもしれない、なんて一瞬考えたけど、そんなものは断れば良いや。
だって、こんなにも優しく祝福してくれる人達を無碍にするなんて出来ないから。
「さてとー、紙吹雪は掃除して、練習始めるかー」
散り散りに自分達の作業へ戻っていく皆を見ながら、また涙が零れそうになる。
ポス、とタオルをいきなり頭から被せられる。笠松センパイだった。
「メソメソ泣いてんなよ、黄瀬。そんなに嬉しかったのか?」
「だって……」
沢山のプレゼントよりも、たった一言の祝福が嬉しくて。
「イケメンが台無しだぞ」
「良いんス、俺はここでは泣き虫の黄瀬涼太ッスから」
「あっそ」
タオルで目を拭って、息を吐く。落ち着いてきた俺を見て、笠松センパイがポケットから何かを取り出した。
「……俺、こういうのセンスねぇし、他の奴らみたいに凄いモンとかじゃねぇけど、とりあえず」
恋人、だからな、と小さく囁かれて、小さな箱が渡される。
「今、開けんなよ!恥ずかしいから……!」
「はいっ」
顔を真っ赤にした笠松センパイに、また嬉しくて涙を零す。グイ、とセンパイが乱暴に目を拭ってきて、痛いッスって言ったら、少しだけ優しく頭を撫でる様にしてくれた。
「ロッカールームに、入れて来るッス!」
「10秒で帰ってこいよ」
「えええ?!」
笠松センパイがニヤリと笑う。俺も、ニッコリと笑った。


ロッカールームに入って、自分の鞄を真っ先に開ける。それから、さっきもらった小さな箱を見て、ドクンドクンと鼓動が早くなった。
少しだけなら、と思って箱を開ける。
そこには、ピアスが一つあった。デザインはシンプルだけど、流線形の綺麗な形をしている。
「センス、あるじゃんかあ……」
俺の為に、必死に選んでくれたんだろうか。どうしよう、凄く嬉しい。
今度二人で出かける時は絶対これを付けて行こう。きっとセンパイは恥ずかしがるだろうけど。
久しぶりに、こんなに楽しい誕生日を迎えられた気がする。
ありがとう、ありがとう。俺は、今日という日を絶対に忘れない。
「黄瀬!早くしやがれ!!」
「うわっ、はーい!!」
そうだ、まだ部活が始まったばっかりだ。
俺は箱を丁寧に元の形に戻して、鞄にそっと入れた。もう、これは家に帰ったら飾るしかない。
俺は急いで鞄をロッカーにしまって、また部屋を出る。もう、今までの誕生日の事は忘れる事にした。
だって、こんなにも幸せな誕生日にしてくれる人達がいるから。
「ケーキ、何が出るんだろうなあ」
顔にぶつけられるのだけは嫌だな、なんて思いながら、俺はコートへと走っていった。
Fin.

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