何となく、予想はしていたんだ。けれど、まさかここまでとは思わなかった。
「ハッピーバースデイッスよ、センパイ!!!」
パアン、と軽い破裂音と同時に色とりどりの紙が俺の頭上を越え、重力に従って落ちてくる。
「おめでと、笠松!な、驚いた?驚いた?」
髪にモシャモシャと色とりどりの紙を頭に載せながら、森山がしてやったりと笑う。ああ、コイツが家に来た時もこんな顔をしていったっけ、と思う。
最初から仕組まれていたのだ、何もかも。
「今日はー、美味しい料理とケーキ用意してあるから、センパイは何もしなくて良いッスからね!!」
「そそ。そーいう事だから!だから、今日はお前が王様な?」
二人の笑顔につられて頬が緩みそうになるが、それを必死に堪えて彼らを突き飛ばす。
「バカ!!何勝手に話進めてんだよ!!!俺の家が俺の家じゃなくなってるし……。つか、黄瀬ェ!!!クラッカーは人に向けて発射すんなって書いてあんだろ!!」
「え、いや、一応天井に向かってやったし……ってか、怒るトコ、そこッスカ?!」
慌てふためきながらも、黄瀬の笑顔はなかなか消えそうにもない。消えない理由も分かっているから、そこは怒らないでやろう。
「大体、この企画、森山さんが考えたんスよ?!オレに怒るより、森山さんにして欲しいッス!!」
「なああ?!ここでお前逃げるのかよ、黄瀬ぇー……!!俺とお前の仲だろ?な、な?」
「知らないッス!オレは巻き込まれただけッス!!」
ひでえよ!!と叫ぶ森山と、知らない知らない、と連呼する黄瀬。ぎゃあぎゃあと騒がしくて、コイツらはいつまでたってもこんな風にしているんだろうなあ、と思う。
「あっ、でもでもでも!プレゼントは買ったんッス!!気に入ってくれるかは分からないッスけどぉ……」
「おま!抜け駆けは禁止だろ?!俺もプレゼント、買ったんだからな?結構悩んだんだからな?女の子の事よりも笠松の事、たーくさん考えたんだからな?」
はいっ、と差し出される二つの包み。何だって、この二人は自分の事になるとこんなに必死な状態になるんだろう。
お世辞ではなくて、この二人なら彼女の一人や二人、普通に作れそうなのに。それなのに、コイツらは自分なんかを選んで、こんなにも必死になっている。
「……っアハハハハ、ホントお前ら残念過ぎ!!」
「「へ?」」
「全く、お前らときたらこんなにバカな真似して……バーカ!!でも、嫌いじゃねーぞ!!!」
「笠松……!」
「センパイ……!!」
包みと、二人が一気に飛んできて。勿論、自分の身体では耐え切れる訳もなく重力に従って落ちて……いかなかった。
ぎゅうぎゅうと二人に押し潰されそうな程抱き締められ、ああ、こんなにも愛されているんだなあ、と思う。だからこそ、愛されているから返したい。
不器用で、不恰好でも良いから、ずっとこの二人と一緒に愛されて、愛して、バカみたいに笑い合って、これで良かったんだよなって思える人生を、歩んでいきたい。
「……ありがとな」
今はこれ位しか、言えないけれど。想いだけは、確かに自分の中に持っているから。
「よし、じゃあケーキ出すか!」
「ロウソク、あっ、マッチも!!」
「……慌てんな。黄瀬は他の食事を出す。森山は取り皿の準備。三人でやれば、すぐ終わる。だから落ち着け」
そう、三人でいるから何だって、出来る。
「っし、出来たな。ロウソクは?」
「ハイっ」
「ん……じゃ、森山。何か言え」
「へっ?あ、えと……とりあえず、笠松、誕生日おめでとう」
「これからも、センパイはセンパイのままでいてくださいねっ」
「「(せーの)ハッピーバースデー!!」」
18と形作られたロウソクに灯る炎に、俺はふうっと息を出す。
わあっと喜ぶ黄瀬の笑顔と、頭をクシャリと撫でてきた森山の嬉しそうな瞳。
こんなに嬉しい誕生日、もう一生ないかもしれない。
いや、もしかしたらこれからはずっと、続くのかもしれない。
「……来年は、お前らの分もやるからな」
ずっと、ずっと。三人で笑っていられますように。
「よし、森山。ケーキに顔突っ込め」
「はあ?!」
「アハハハ、森山さんいけー!」
楽しい誕生日を迎えられた事に、感謝しよう。
ありがとう、ありがとう。
Fin.

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